発達障害と化学物質

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会報6号掲載 より 特別寄稿2 発達障害と化学物質  渡部 和男(元浜松医大 医学博士)   発達障害と化学物質に関する詳しいことは私のHPに掲示してある 「危険な道:子供の発達に対する毒物の脅威(社会的責任の医師大ボストン 支部)」を参考にして下さい。 【参考】http://www.maroon.dti.ne.jp/bandaikw/child/InHarm'sWay/InHarm'sWay.htm   子どもは子宮の中で発達し、生後も発達を続ける。これは神経系も例外でない。神経細胞は試行錯誤を重ねながら、正常な場所に達し、情報を受け取る樹状突起を発達させ、情報を送る神経線維をのばす。 これらの発達は多くの影響を受ける。私が頂いたテーマは「発達障害と化学物質」であるが、現実世界で使用されている約10万種という化学物質と発達障害との関係を述べ尽くすことは時間や資源の面から不可能です。さらに、化学物質の数は米国の化学物質登録サービスによると、5000万種類に達したそうです。全ての化学物質が日常的に使われてはいませんが、1980年代には100万種類であった事を考えると驚異的な増加です。  発達障害や学習障害、行動障害は最近の教育現場で大きな問題となっています。教育現場にとどまらず医学分野でも注目を集めています。米国衛生研究所が提供している論文のデータベースにより発達障害 developmental disorderで検索すると、26,100の論文がヒットします。このように膨大な論文を全て読むことも困難です。幸い米国の医師グループ「社会的責任の医師大ボストン支部」が「危険な道:子供の発達に対する毒物の脅威」という報告書を出しています。この問題を詳しく調べたい場合は参考にして下さい。 発達障害に関する詳しいデータは少ないが、影響を被っている子供たちは増加する傾向があると、方々で指摘されています。人間や動物での研究は日常的にある化学物質が子供の発達に影響を与えています。  鉛や水銀・カドミウム・マンガンなどの重金属や、ニコチン、家庭や学校で広く使われている有機リンやその他の農薬、ダイオキシンやPCB、エタノールや溶剤が発達に影響を与えていることは良く知られています。これらは神経細胞などに対する直接的な毒やホルモンかく乱物質として作用したり、神経伝達を妨害したりし、様々な細胞間の情報伝達をかく乱します。以下に身近にある主な有害物質が与える影響を見ます。 ・鉛: 乳児や幼児期の血中鉛が増加すると、注意欠陥や衝動性増加・学業成績低下・攻撃性・非行行動と関連する。学習への影響は現在「安全」と考えられているレベルより低い血中鉛レベルで見られている。 ・メチル水銀: 胎児期のメチル水銀大量被ばくは、精神遅滞や歩行障害・視覚障害を起こす。日常的な魚摂取から生じるような、胎児期に少量を被ばくすると、その後の言語や注意・記憶の障害に関係がある。日本でメチル水銀汚染の原因となった胎児性水俣病患者では、知能障害や言語障害、発育障害が見られています。2010年に起こった和歌山県のイルカ漁に反対するグループの行動はひんしゅくを買うものであるが、子供たちの健全な成長に責任を持つ大地町教育長は科学的根拠も示さず、「私も長年、イルカを食べてきたが、健康被害など聞いたことがない」などと話し、和歌山県知事も安全宣言を出している。子供たちや成人の脳神経をおかす懸念のあるメチル水銀摂取を可能な限り抑える方策を考えなければならない人達の発言とは思えません。 ・マンガン: マンガンは非常に重要な酵素反応で触媒として必須です。しかし、研究によると、幼児期の過剰なマンガン被ばくと多動や学習障害とが関連するといわれています。自分たちが使用している水道中のマンガン濃度をチェックする価値はあるでしょう。 ・ニコチン: 妊娠中タバコを吸った女性から生まれた子供は、IQ 低下や学習障害・注意欠陥障害の危険があります。また受動的にタバコの副流煙に被ばくした女性から生まれた子供も、会話や言語技能、知能の障害の危険があるとされています。 ・ダイオキシンとPCB: 一時期、焼却場とダイオキシンが多くの関心を集めました。最近では忘れ去られた感がありますが、いぜんとして大きな問題です。胎児期にダイオキシンに被ばくしたサルは、学習障害を示します。また、胎児期に低レベルPCB被ばくをした人間とサルに学習障害があると報告されています。胎児期にPCB に被ばくした子供を数年後に検査した時、IQ 低下や多動性・注意欠陥が明らかです。胎児期にダイオキシンに被ばくしたサルでは、学習障害が起こったと報告されています。 ・農薬: 一般的に使われている有機リン系農薬は、動物実験で発達の決定的な時期に少量を一回投与すると多動性を生じさせ、脳の神経伝達物質に長く続く変化を起こします。 有機隣剤の一つは発達中の脳でDNA 合成を減少させ、細胞数を減少させます。ピレスロイド殺虫剤も、発達の重要な時に少量を被ばくした動物で、永続的な多動性を生じさせます。メキシコの農業社会で種々の農薬に被ばくした子供は、農薬被ばくが少ない社会の子供よりスタミナや協同作用・記憶・絵を描く能力が劣っていることが知られています。 ・溶剤: 発達中に溶剤被ばくをすると、脳構造の先天異常や多動性・注意欠陥・IQ 低下・学習と記憶の欠陥などの障害を起こすとされています。動物実験や人間の研究結果によると、妊娠中にトルエンやトリクロロエチレン・キシレン・スチレンのような一般的化学物質の被ばくも学習障害を招き、特にかなり大きな被ばくその後の子供の行動を変化させると報告されています。 ・アルコール: 妊娠中に母親が1 日に1 度アルコールを飲むと、子供が衝動的行動を示すことや、記憶やIQ・学業・社会適応の欠陥がその後続くと考えられています。  これまで例示してきた化学物質により、愛する子供達が犠牲になることは、大人である私たちが防がなければならないことです。香料のような身の回りにまとう不必要な化学物質の使用も減らしていかなければなりません。これらは化学物質過敏症患者の要望というよりは人類全体が必要としていることです。  これらの危険な道から自分や子供達を抜け出させるために、表題の下にあるURLをたどって、「危険な道の外へ:子供の発達に対する有毒な脅威を防ぐ、子供の発達のために健全な環境を作る、親と将来の親のための個人的指針」を参考にして下さい。