有害物質SOS
京都カナリヤ会・・・有害物質による健康被害者の支援と予防活動を推進する市民の会
活動報告
イベント・講演会 > 2009年度連続講座第1回「空気・土・水・食の安全について」

2009年度 農薬危害防止月間 啓発セミナー / 京エコロジーセンター助成対象事業
空気・土・水・食の安全について

日時 2009年7月4日(土)13時30分〜16時
場所 こどもみらい館 4階 第2研修室(京都市中京区間之町通竹屋町)

矢印プログラム内容
報告 「京都府 農薬危害防止運動の取り組み」
野村 英明さん(京都府農林水産部 食の安心・安全推進課 副課長)
講演 「省農薬で 人の健康と環境を守る」
石田 紀郎 さん (京都学園大学バイオ環境学部 教授)
石田 紀郎 さん (元 京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究科 教授)
主催 京都カナリヤ会
協力 京大農薬ゼミ   鮎の会   アレルギーネットワーク京都


13時00分 開場 受付開始
13時30分 開会宣言 司会:只今から京都カナリヤ会本年度第1回の講座を開催致します。

<主催者挨拶> 
京都カナリヤ会は「有害物質による環境汚染の予防を呼びかける市民の会」として昨年3月に設立されて以来、皆様方の多大なご支援を賜りました。おかげさまで、初年度は4回の講演会を開催して広く呼びかけ、SOS受発信や会員交流会ほか、趣旨に基づいた多様な活動を展開することができました。
厚くお礼を申し上げます。

2年目の活動に向けて進めておりました事業計画が、今年も京都市の環境保全事業・京エコロジーセンターの助成対象として採択されました。本日はその京エコロジーセンター助成対象事業の第1回目の講座でございます。

今回の講座は、農薬危害防止月間中の啓発活動として、これまでの講演会にご参加下さったの皆様方および会員からのご意見やご要望が多く出ておりました農薬・殺虫剤の影響と、空気・土・水と食の安全を考えるテーマとしました。当初より農薬飛散の被害について、懇切に対応下さいました京都府農林水産部の野村副課長に今回の出前講座をお引き受け頂きました次第でございます。

また、環境問題について、特に農薬問題に関して、長年の実践と研究を続けられている石田先生には、設立前から農薬ゼミの省農薬ミカンのご縁でご支援を頂き、今回の講演をお願いできましたことは幸いでした。
お席はご自由に移動して頂いて、どうぞお楽にご清聴下さいますようお願いいたします。

13時35分
司会:それでは先に本日のプログラム進行予定を申し上げます。

お手元の資料のとおり、最初に、京都府の野村副課長の講座は質問を含めて只今から 40分の予定でございます。この後、休憩10分をとりまして、14時30分から15時50分まで石田先生の講演と質問、その後に、本日の催し協力団体からの一言メッセージをご紹介して16時終了の予定でございます。

13時38分
それでは農薬危害防止運動京都府の取り組みについて、農林水産部食の安心・安全推進課の野村副課長にお願いします。

■ 京都府 農薬危害防止運動の取り組み 報告抄録

野村 英明さん(京都府農林水産部 食の安心・安全推進課 副課長)講演の様子
京都府農林水産部食の安心・安全推進課の野村です。

京都カナリヤ会さんから、住宅地の農薬使用についての照会や被害苦情などの相談を通じて、この問題に関する京都府の取り組みを紹介する依頼を頂き、本日の講座となりました。

食の安心・安全推進課は、昨年の汚染米や食品偽装などの問題を受けて、新たに縦割り組織を繋いで食の安全を推進する事務局のような役割を担い、食品表示の問題や、農薬の安全や肥料に関する問題の窓口も担当しています。

農薬は、農作物生産に欠かせないものですが、同時に大変危険なものですから法律で規制されています。制定されている農薬取締法と危害防止対策について、短い時間内でもご理解頂けるよう、資料を用意しましたので、この資料に従ってゆっくり説明させて頂きます。不明な点は後ほどの質問時間にお願いします。

1.農薬危害防止運動の取り組みについて
  ・農薬取締法について
  ・京都府農薬危害防止運動について(6月1日〜9月30日)
  ・住宅地における農薬の使用について
  ・農薬取り扱い講習会・農家対象研修会の実施状況
  ・農薬販売業者への立ち入り検査の実施状況
  ・農薬管理士の認定状況
  ・ゴルフ場の農薬指導
  ・農薬事故発生状況・京都府下の農薬危害防止窓口紹介

2.京都府農薬飛散防止対策協議会(JA京都中央会・JA全農京都・京都府)
  ・守ろう!3つの基本

3.リーフレット「農薬飛散による被害の発生を防ぐために」
  ・農薬には作物や樹木に発生する病害虫の防除を目的に散布するものの他に、ガーデニングや家庭菜園用のスプレー式の殺虫剤や殺菌剤、芝生等の雑草対策で使用する除草剤なども含まれます。
  ・本年度はこのリーフレットを2万枚を印刷して各市町村と学校関係・医師会・警察署・消防署他の公共施設とゴルフ場・造園業者組織等に配布しました。
  ・このリーフレットは農薬取り扱い講習会・研修会の資料として使用し、指導しています。
    農薬はなるべく使用しない・風の強い日の散布・近隣の学校・住宅には気をつけるべき。
    事前に周囲に散布日時と薬剤名など充分な告知をすることを業者にも徹底している。
  ・但し、農薬と同じ成分の殺虫剤でも衛生害虫用の薬剤は農薬取締法の対象にはなりません。

4.おわりに、 農薬を散布することは否定できませんが、飛散の被害防止に向けて今後も取り組みます。

<参加者からの質問> 
1.住宅地に隣接する農地で告知なしの散布に長年の健康被害が続いています。
府の出先の窓口に何度も届けてきて、ようやく今年、先月から告知ビラと看板が出るようになって薬剤名も記載し始めましたが、希釈倍数や展着剤は不明です。府が散布現場に立ち会うことはできないのでしょうか。

2.強風下でも散布を強行しているケースが散見されますが、散布時の風速規制はないのでしょうか。
2.農薬の取り扱い講習会には現場担当者を出席させているのでしょうか。
2.散布作業員に取扱いの知識があるのか。散布薬剤名を調べると失効農薬だと判明したこともあるのですが…。

3.造園業者は何に該当するのですか。
3.衛生害虫用殺虫剤は「農薬」に該当しないとは、どういうことですか。
3.ベランダで撒く殺虫剤はどうなるのですか。

4.マンションのベランダでそれぞれに撒く種類の違う農薬の複合空気汚染は危険ではないか。
4.またマンションの植栽への農薬散布を控えてほしいと申請しても、理事会で有機リン系農薬を撒くことを決め、
4.告知なく散布している。
4.責任は管理組合の理事長であるはずなのに、散布業者だという。
4.その度に目まいや頭痛など健康被害が出るがどこにも行き場がない。
4.市の街路樹についても、散布時期に関して告知を徹底してほしい。


質問は続きましたが、時間の制約もあり、別途個別対応していただくこととし、野村副課長のご報告は終了しました。

14時35分 終了 〜 休憩10分

14時45分 続きまして、講演「省農薬で人の健康と環境を守る」講師の石田先生をご紹介します。
お手元の資料のとおり、石田先生のご専門は「環境毒性学」で、京都大学大学院を退官後も、幅広いご活躍を続けられ、市民活動を支援されています。その40年余りに亘る活動の中から、本日は、農薬が人体と環境に及ぼす影響の実態を中心に、お話して頂きます。

■『省農薬で 人の健康と環境を守る』講演抄録

石田 紀郎 さん(元 京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究科 教授) 講演の様子
石田です。只今ご紹介頂きましたように、今日はこれまで私が辿ってきました農学から環境問題に関連しながら、農薬の使用について話します。

まずは、日本の農村の原風景からご覧いただきましょう。これは私が生まれ育った滋賀県の北西部で、琵琶湖から3キロ程の農村です。湖西線の電車も見える所ですが、世帯数も減り続け、今は小学生が数人、中学生はいなくて、高校生が1人という過疎の村となってしまいました。

1970年代からはじまった米の強制的な生産調整=強制一律減反は、農業現場に深い傷を残しており、日本の農業政策がこのような過疎の村を作り出したのです。
減反政策の弊害として、日本の原風景が失われること、自然環境が変化し生態系に影響を与えること、伝統ある農業文化が失われることなどが挙げられるが、この政策の中で農業を続ける農家は、農薬を使用しなければ農業が成り立たなくなって行ったのです。

私の実家は、そのまま兄が引き継いでいますが、近年はサルやイノシシなど野生動物が農作物を荒らす被害も出ていて、紅い実のなる柿の木を軒並み切るなどの対策で凌いでいるのが実態です。

 京都府農薬対策で野村さんの話でも、「生業(なりわい)としての農業で使用する農薬には理解が必要、家庭菜園の農薬とは必要度が違う」という言い分は理解しなければならないと思いました。
家庭菜園やベランダで、農薬を使用するなどはもっての外ですが、野村さんへの質問内容は、生業としての農業を営む農家が使用する農薬についてのものが、深刻でした。

この点をしっかり突き詰めて、今日はこの話を前提に進めます。

農薬は省くべき存在です。省く程度は何を作っているか、どんな風土で作っているか、どんな技術を持っているか、ということと、その時の社会情勢や市民社会の在り方で決まってきます。
この組み合わせが功を奏せば、1回だけで、または2回だけになるかです。
全体として農薬の使用を省く方向へ向けるように、私はもう40年前から省農薬を提唱し、和歌山県のミカン栽培で実験を重ねて発表してきました。

野村さんから、何が専門かと聞かれて、植物病理学と答えましたが、植物病理学とは植物の病害を診断し、予防あるいは治療するための学問領域です。

農業を営む「百姓」は、水、養分、光で稲が育つ様子を毎日見つめる中で、鳥や草、大気汚染や害虫とも闘っているのです。いろいろな防除法を試しても、実行するに要する人手がない、時間がない。害虫と戦う道具は農薬しかない状況の中で、米や野菜を育てていることを理解して欲しい。

しかしながら、このような農業に追い込んだのは、日本の農業政策です。

農業が生業として成り立たず、外で働きながらの農家では、田んぼをじっくり見て回ることもできない。朝陽や夕陽では病気が見えない、害虫への恐怖から農薬を多用することになるのです。
農家が農家として成り立たない日本の農業政策が農薬の使用を増大させたのです。
元気な土と水と堆肥だけでは農業問題は解決しない。農業で生活できる政策に転換すれば、農薬の使用は減少します。

昨日の朝日新聞に、水俣問題の記事が出ていました。胎児性水俣病や世界各地の水銀汚染の調査研究などにも取り組む熊本学園大学の原田正純先生が、各地の水俣病裁判では被害者支援の立場から証言されてきた研究者の言葉として、今後を暗示されています。

戦前から水銀剤は稲のイモチ病の消毒剤に使用されていました。イモチ病は稲を侵すカビです。

寒い、長雨、日照不足という天候条件も重なり、感染すると収穫量は2割位になることもあり、日本中が米不足になります。 宮沢賢治の「寒い夏にはオロオロ歩き」の詩は、一行でイモチ病の怖さをしています。東北地方の悲劇が始まることを告げる鋭い感受性を読むことができます。

このような時、このカビとの戦いは農薬しかないという考えのもとに水銀農薬が大量に使用されたのは、1971年までです。 1971年に水銀含有消毒剤の使用は禁止されましたが、それまでの間、水銀によって空気、土、水が著しく汚染されました。 1958年、私が京都大学農学部に入学した翌年に、水俣病は有機水銀が原因であると国が認めました。

しかし、農業現場では水銀農薬を撒き続けていました。

その頃から私は、農薬行政は何故、水銀農薬の使用を止めなかったのかと考え始めました。私は植物病理学から離れて、水俣と農薬は同じレベルの問題として捉えることが今後の農薬を考える上で必要な視点であると考え、この時から環境毒性学を志しました。 昨年秋の琵琶湖市民大学でも、原田先生を招いて水俣学の講演と学習会が開かれたので、参加しました。

水俣病が我々の社会に対して警鐘を鳴らしていたのに、社会はその本質に気づかず、多くの公害の悲劇を作り出してしまいました。そういう点で、今、京都カナリヤ会の警告も重要であると思います。

1970年に減反政策が始まって全体の農薬の使用量は減少し始め、2007年にはピーク時の半分以下の30万トンになりましたが、単位面積当たり使用量は増えているでしょう。

農薬は基本的には毒物です。毒物、劇物、普通物の分類の中で、急性毒性の高い毒物に分類される農薬は2007年までに消えているとはいえ安心できません。急性毒性の農薬は減って、慢性毒性の薬剤が増えてきたのが今の農薬の特徴でしょう。急性毒性が低くなったことで、薬剤の扱いがぞんざいになってしまいます。

省農薬を実現し、持続させるのは、国の農業政策ですが、同時に消費者にも、農家に対する理解を示し、農家を支える必要があります。

たとえば、米がカメムシの被害に遭い、2000個の米粒に2粒の割合で斑点米が混じると、1等米から格下げされ、60キロで1000円も価格が下がるから、農薬を大量に使用するようになる。コシヒカリやササニシキなど、「味はよいがイモチ病に弱い品種」を好む消費者が、農薬を大量使用する社会を作り出しているのです。

安全な農産物を期待するなら、生業としての農業を支えながら、農薬の使用を減らして行くようにするため、 生産物を購入する消費者の意識改革が必要です。

長年関わってきた京大農薬ゼミも、私が退官後に開いた市民環境研究所に集まり、若い学生達と共に、この問題について調査・研究を続けています。
京都カナリヤ会の警鐘にも耳を傾けながら、連携していきたいと思います。

<拍手>

15時50分 司会: 石田先生、有難うございました。
皆様、いかがでしたか。日頃の農薬・殺虫剤の使用と身の周りの環境を見直す機会となれば幸いでございます。
それでは、只今から質問時間に入ります。

その前に確認を願います。資料の中にアンケート用紙を綴じていますのでお帰りの際にお出し下さいますようご協力をお願いします。
それでは只今から、本日の催しの協力団体をご紹介させて頂きます。

・京大農薬ゼミ  ・京都アレルギーネットワーク  ・鮎の会 

一言メッセージをお願いします。ありがとうございました。
これからも共通の願いを実現できるよう、ネットワークで連携できればと期待しています。


<主催者挨拶>
皆様、長時間に亘ってご清聴有難うございました。
会員の皆様から寄せられる農薬飛散による健康障害の切実な訴えには、現地に出向いて感査の上、近畿農政局や京都府の相談窓口にお伺いしてまいりました。

しかしながら、行政が及ぶ範囲では解決不可能な問題であることを理解し、また更に本年度は、住宅地における農薬使用に関して、市民・地域住民への周知徹底と啓発を願い出ました。
実態を確認できなければ行政も関われないことや、農薬と同じ成分の薬剤使用による見えない空気汚染被害が生じる可能性があることを考えれば、被害を防ぐためには、資料に添付していますように、安全性の確認できない薬剤を規制する化学物質基本法の制定しかないと考えて当会も請願して参ります。

今年度の事業計画は、昨年度の「有害化学物質の人体への影響」についての啓発学習に引き続き、私たちの念願であります「私たちと未来のこどもたちの生活環境を守る社会の実現」に向けて、胎児やこども、そして化学物質への感受性の高い人々が安息できる社会作りを呼びかけ、健康被害者の相談窓口を担うという内容です。

そのために行政とご理解を頂ける医師・弁護士・研究者の方々のご支援を願って参ります。そして、支え合うネットワークの構築が要と考えております。

次回講座は11月初めの予定でございます。今後もご支援をお願いいたします。
皆様、本日はありがとうございました。どうぞお気をつけてお帰り下さい。

16時10分 閉会
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