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京都カナリヤ会・・・有害物質による健康被害者の支援と予防活動を推進する市民の会
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設立2周年 記念セミナー 「日本人だけが知らない、タバコの真実」

日時 2010年4月3日(土)14時〜16時
場所 こどもみらい館 4階 研修室(京都市中京区間之町通竹屋町)

矢印プログラム内容
講演 「日本人だけが知らない、タバコの真実」
繁田 正子さん (京都府立医科大学大学院医学研究科 地域保健医療疫学 講師)
ゲストスピーチ 「受動喫煙防止条例制定に向けて」ほか
栗岡成人 先生 (NPO 法人京都禁煙推進研究会理事長・城北病院院長)

主催 京都カナリヤ会
協力 日本禁煙学会  京都新聞社社会福祉事業団


■ 第1部 「日本人だけが知らない、タバコの真実」 講演抄録

繁田 正子さん(京都府立医科大学大学院医学研究科 地域保健医療疫学 講師)講演の様子

<はじめに> 
化学物質過敏症や環境問題を研究する人は、初めにタバコの害を知らなければならない。
昨年秋の京都カナリヤ会との出会いから、医師や研究者と市民が一丸となって、今こそ、この事実を社会に発信し ていかなければ、未来の子どもたちの健康を守れないことをあらためて認識した。

本日の講演では、タバコに関するデータや各国の取り組みについて、映像を交えて説明を加えるとと もに、後方席に展示している「タバコに含まれる有害化学物質の現物」を確認いただき、耳と目から真 実を捉えていただきたい。


<タバコと肺がんについて>
私は京都府立医大で内科の呼吸器科外来担当医として肺がんの患者を診ていたが、当時は、喫煙と肺 がんとの関係には気がつかないままで治療に当たっていた。

その後、日赤第一病院で内科医を務めるこ とになり、ここで疫学に出会ったことが、タバコの人体への影響を研究する転機となった。 なぜ、このような病気が発生するのか、その原因について、大量のデータから疫学的に判定する学問 を知った。

当時の治療では新しい薬の使用が推進されていたが、 日赤病院で過ごした11 年間は、薬の使用ではなく、禁 煙によって肺がんを治療する研究に従事していた。英 米では1970 年頃からこのような研究されていたが、当 時の日本では、肺がんは治療しても治らない病気とし て扱われていた。私は、これでは国民は救われないと 考えていた。

12 年前のことである。私はタバコと肺がんについて、 もっと多くの市民に知識を広げたいとの考えから、府 立医大の地域保健医療疫学研究に転じ、タバコの毒性と、禁煙による肺がん罹患の減少について、実証 データから検証し学会で発表してきた。

タバコは肺がんだけではなく、その他の臓器のがんや肺気腫、 脳卒中、心臓病、喘息などの要因となっていることは、欧米では早くから研究されて明らかになってき ていた。また、タバコを吸わない人も受動喫煙によって同様に罹患し、シックハウス症候群や化学物質 過敏症の発症の要因には受動喫煙も含まれることが究められている。

タバコは肺がんの要因であるだけ ではなく、健康な人の体を蝕む要因であるという事実について、地域の保健対策で行政と共に警鐘を鳴 らし、現在は、より早く若い世代の健康を守るために学校を巡回しながらタバコフリーの社会を目指し て禁煙の推進と健康被害の実態を伝えて予防啓発を進めている。


<タバコとは、何か>
京都カナリヤ会でタバコと農薬・殺虫剤の危害の問 題に取り組み始めたきっかけは、有害物質の中でも身 近で最も人体に影響するということで皆さんからの要 望があったためである、と先ほど代表の話でも述べら れていたとおり、タバコは極めて有害である。

タバコ =農薬・殺虫剤である。タバコは腐らない。葉っぱなのに何故カビが生えないのか。今日のタバコは葉 っぱではない。タバコ葉をドロドロの液体にした後、多種類の薬剤を入れて薄いシートにし、乾燥させ て刻んで紙で巻いたもので、タバコは農薬・殺虫剤ほか有害化学物質の塊である。

薬事法ではタバコに使われる農薬や薬剤に規制がない。野菜や食品は農薬取締法や食品衛生法などの 規制で管理されているが、タバコの製造には、どんな農薬や殺虫剤であろうと、何を使用しても構わな いことになっている。財務省のタバコ事業法が唯一のタバコに関する法律である。

タバコは、毎日、煙にして吸ってしまう極めてユニークなオンリーワンの商品であると言った人がい る。タバコは食べると胃酸によって毒を吐き出すが、吸いこむと肺に有害物質が蓄積される。これが一 日20 本、年間7300 本のタバコを吸う人の肺に溜まる一年間のタールの量です。

世界タバコ会議に参加した時、カナダで脳卒中で死亡した人の脳を解剖した結果、脳の中にタバコの 成分が溜まっているという写真と記録が公開されていたが、日本ではタバコ病について、まだ国民に事 実が知らされておらず、医師も知らない。

タバコの包装では喫煙を進めるコピーなど売るための広告が 大きく、有害性についての告知は小さい。メディアもまた、タバコの広告が大きな収入源であるから、 積極的に有害性を伝えてはくれない。

しかし、本当の事実を知ってこそ怖さを伝えることができる。大学でも医 学でも、こんな大事なことが知らされて来なかったので、今日、タバコの害が大きな社会問題となって 出現している。タバコの煙は肺がんだけではなく、呼吸器、循環器、胎児の障害にまで及んでいる。

それでは、ここから、本題の「日本人だけが知らない、タバコの真実」をスライドで始めます。


<今、なぜ、タバコなのか>
喫煙者の死亡は年間10 万人、その内、肺がんでの死亡は6 万人。長らくタバコの煙についての問題が 放置されてきたが、昨今、このような事実が明白となって国もようやく取り組み始めた。しかし、日本 はタバコ問題の対策では未だ後進国である。

本題の受動喫煙について、私はこの3〜4 年間は受動喫煙の恐ろしさを理解して取り組んでいるが、一 般的には、医師も行政職員も受動喫煙の被害には気付かず、タバコ税の税収が国を支えていると思って いる人が殆どである。しかしながら、タバコの税収は年間2 兆円、喫煙、受動喫煙による疾病に関する 医療費や、国家の経済的負担と社会的負担の総額は年間7 兆円と試算されている。年間5 兆円の差額は 全国民の負担となっていることも知らされていない。

日本のタバコ産業の歴史は日露戦争当時に始まり、当時、軍需費の捻出のために国民にタバコを販売 した。これが専買制となって、長らく大蔵省管轄の専売公社として存在し、JT になった現在も、内部に タバコの有害性についての研究者は少なく、また研究費の申請もままならず、国家が国民に有害性の事 実を知らせて来なかった。


<受動喫煙と化学物質過敏症>
1975 年、私が府立医大に入学した当時は、男子学生の80%は喫煙していた程で、医学部でもその害に ついては全く知られていなかった。研修医になっても、胃がんに対する知見を得ても、肺がんの原因に は疎かった。

一人の人間が死亡する際、その死因は多数ある。しかし、肺がん患者の中に占める喫煙者 の割合が大きい、という疫学データによってタバコの害は明らかとなり、さすがに、今日ではもう気が つかなければ手遅れである。

受動喫煙によって化学物質過敏症を発症した人が、眼や呼吸器粘 膜の痛み、頭痛などの全身症状を引き起こすのは、タバコそのものが殺虫剤、ホルマリン、トルエン、 ベンゼンなど多種類の有害化学物質の塊であり(これらはシックハウス症候群の原因となる物質と同じ もの)、その煙を吸収すると即座に体にあらわれる中毒症状の1つである。


<知らされないタバコの成分と健康への影響>
タバコに含まれる有害物質 タバコの白い紙には100 分の1 秒でくっつく強力な接着剤が使用され、1 本のタバコには4000 種の化 学物質が混合されており、そのうち60 種類が発がん物質であると判明している。

受動喫煙によって発症する可能性が明らかに高くなる、と医学的に認められている病気は、肺がん以 外にも、呼吸器疾患や喘息、心筋梗塞、脳梗塞、脳卒中、などがある。更には妊娠中の母体への影響も 懸念され、早産や低体重児ほか、胎児と子どもたちにも様々な影響が出てきている。

また、シックハウ ス症候群や化学物質過敏症が受動喫煙に関連していることも、疫学的に判明し始めている。

タバコは1942 年にコロンブスが発見して以来500 年間、世界中に広まったが、食品でも薬品でもな く、規制する法律が無いことに疑いを持たれにくい「ブラックホール」であった。


<ようやくタバコ規制>
2000 年頃から、英米の研究成果を踏まえて法規制の機運が高まり、2003 年、WHO がようやく大気汚 染防止のシンボルとしてタバコ規制に動き出した。これが世界の国々に向けた初めてのタバコ規制であ る。

20 年前、環境省が大気汚染の調査を行った際の結果では、ダイオキシンの大部分は都市のゴミ焼却炉 から排出されていることが報告された。その後、規制が設けられ、焼却炉を減らす方向が示された。

一方、タバコ1 本の煙の毒性は、焼却炉から排出される煙の20 倍に相当する。

1998 年、旧厚生省のホームページにタバコ対策が掲載されている。その資料では、タバコは副流煙の 方が有害であると記載されている。

タバコの有害性を示唆するこのような情報を、なぜもっと国民に伝 わるように知らせないのか。

喫煙者がタバコを吸う時の煙は高温で燃焼されたもので、発がん物質を含んでいる。吸っていない間 に出ている煙は低温で燃焼されたもので、ダイオキシンと同様の成分を含む。


<受動喫煙による健康障害>
受動喫煙によって、子どもは中耳炎に罹りやすく、また、 喘息など呼吸器疾患や乳幼児突然死症候群などが発生す るリスクが上昇する。

100 万人あたりの死亡要因として、アスベストによる肺 がんの死亡が10 人であるのに対し、受動喫煙による死亡 は100 人であり、受動喫煙にはアスベストの10 倍のリス クがある。

タバコの有毒な煙は半径7m 先まで蔓延する。分煙は効果がなく、空気清浄機も効果がないことが実 証されているが売られている。タバコの煙は微粒子となって飛散する。目に見えない微粒子は人体に影 響があるとして、環境省はようやく「PM2.5」という基準を制定した。

京都市内のレストラン内を、このPM2.5 測定機で測ると、基準値の10 倍以上のデータが出る。ここ に勤務する人は、1 日8 時間、受動喫煙に曝され、これが将来的に健康障害をきたす要因となることが わかる。

また、タバコの煙は、喫煙・受動喫煙ともに歯と歯茎にも悪影響を与え、歯周炎の発症率も 上昇させる。

タバコ対策によって日本人はもっと元気になる。タバコを取り巻く環境を改善することで、10 万人の 死亡者および大勢の苦しむ人が救われる。

日本政府が変わらなければタバコ問題は一向に改善しない。受動喫煙は巻き添え以外の何物でもない。 政府が変わるまで待っていられない。タバコの煙がいかに恐ろしいものかということを知らせなければならな い。化学物質過敏症も禁煙が進めばかなり改善すると考えられている。

タバコを吸う人も私たちの家族であり、友人であり同僚である。タバコを吸う人達と話し合って、禁 煙を進めて行かなければならないと思う。

私たちの手で受動喫煙の危険性を伝えながら、社会を変えていきましょう。



■ 第 2 部 ゲストスピーチ「受動喫煙防止条例制定に向けて」

栗岡成人 先生 (NPO 法人京都禁煙推進研究会理事長・城北病院院長)講演の様子

京都禁煙推進研究会は医師、歯科医、薬剤師、看護職とその団体などが中心となって、1998 年から主 に京都府下で活動している350 人ほどの非営利団体です。

医療者がなぜ、禁煙を勧めるのか。

それはタバコの被害で苦しんでいる患者さんを数 多く診ているからです。しかも患者さん自身が、自 分の病気はタバコが原因であることに気づいていな い・・・という二重の悲劇を目前にして「惻隠の情 なければ人にあらずや」という思いがあるからです。 幼い子が井戸に落ちようとしているのに助けない人 はいないでしょう。血圧が250mmHg、血糖値が 300mg もある人を医療者は放ってはおけません。タバコはそれ以上に危険な結果をもたらすので禁煙を 勧めるのです。

昨年は医師会や行政と協力して62 校の小・中・高校を防煙授業で巡回し、ポルタで市民啓発イベント を行ないました。今年も引き続き教育啓発活動をしていますが、今後は市民の方の参加を期待していま す。京都府には受動喫煙防止条例の制定を要望しています。京都カナリヤ会も要望書を提出されていま すね。

今年1 月に京都は禁煙レストランの比率(7.7%)が日本一という記事が京都新聞に掲載されましたが、 そこで私が強調したいのは、なぜ、飲食店は禁煙でなければならないかということです。それは来店者 が被る受動喫煙もさることながら、そこに勤務する人達の長時間の受動喫煙による健康被害がより重大 だからです。

世界の多くの国や地域で受動喫煙が法律により規制されている中で、サミット参加国で規制がないの はロシアと日本だけという現状です。日本のタバコ対策がいかに遅れているかは言うまでもなく、早急 に受動喫煙防止法の制定が必要です。

世界中でタバコによる死亡が年間540 万人、日本では年間11 万人がタバコで死亡しており、それ以外 に毎年2 万人近くが受動喫煙により死亡しています。京都府下では年間500 人が受動喫煙で死亡してい ると推定されます。

これほど多くの人が死亡する商品が他に売られているでしょうか。

2005 年2 月27 日にWHO 世界タバコ規制枠組条約が発効しました。公衆衛生分野では初の国際条約 です。

その目的は、タバコの消費及びタバコの煙に曝されることが健康だけでなく社会、環境、及び経 済に及ぼす破壊的な影響から、人々を守るためであると条文に示されています。日本を含め世界168 ヵ 国が批准しています。

2007 年に出されたガイドラインには
「タバコ煙曝露に安全レベルはなく、100% タバコ煙のない法的環境を作り出す必要がある。すべての人々は受動喫煙から守られなければならない。 すべての屋内の職場とすべての公衆の集まる場所は禁煙でなければならない。人々を受動喫煙から守る には法律が必要である」
と述べられています。

発効から5 年以内に、受動喫煙からの例外なき保護を法律により実現しなければならないのですが、 期限はもう過ぎています。いまだ法律が制定できていない我が国は国際条約違反です。

また、日本国憲法の第98 条第2 項には「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠 実に遵守することを必要とする」とあり、その意味するところはわが国の国家機関及び国民は条約によ って拘束され、裁判所も条約を適用しなければならないということです。

京都府では受動喫煙防止条例の制定に向けた動きがあります。我々医療関係者も実現するよう要望し ています。

今後その実現に向けて中心になるのが市民社会です。市民がタバコの害に気づいて、議会に要請する などマスコミと共に世論形成の役割を果たしていただきたいと思います。

本日、ここで、この状況を知った皆さんから多くの人に伝えられることを願っています。
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